10月8日に東戸塚のSala MASAKAさんにて、内藤晃さん、渡邊智道さんによる2台ピアノの演奏会を開催しました。おかげさまで多くの方にご来場いただき、満席盛況で終了することができました。あらためて感謝申し上げます。
昨年に引き続き、このシリーズは2回目の開催となりましが、企画の発端は音楽の一回性と録音の関係について内藤晃さんと交わした会話の中から生まれました。少し立ち止まって日常を眺めると、たった一回しか起こらない出来事が積み重なり、時間の流れとなっていることに気づきます。一回性。デジタル技術の進展にともない、あらゆる編集加工が可能となり、世に溢れるパッケージ音楽は、編集加工を前提として制作されていることは皆さんご存知のことと思います。それは、可能な限り音楽的に潔癖なものを目指しているからだと思います。「生きた時間を寸断するのと引き換えに、潔癖となった音楽は本当に心を打つのだろうか?」録音の仕事に携わっている中で私が漠然と抱いている疑問です。その答えは未だ得ておりません。そこで、演奏会と同時にライブ録音を行い、そのまま編集加工なしの「録りたて音源」をCDにしてお客様にお贈りするのはどうか?と企画は進みました。
今年は、2台ピアノによる音楽の対話の世界をお楽しみ頂きました。楽器との対話、演奏者どうしの対話、ご来場頂いた方々の対話、そして作曲者、音楽との対話。今この場でしか経験することのできない、多義的、重層的な時間を過ごして頂けたと思います。
そうして過ごした時間をパッケージした「録りたてCD」は、お気に入りの書物と同じように、時間をおいて反芻したならば、新たな発見、新たな音楽の対話が聞こえるかも知れません。