9月5日に、マサエ・銀林さんの新しいピアノ・アルバムのレコーディングをしてきました。収録地は戸塚区民文化センターさくらプラザです。今回は、東京で2箇所、徳島でのライブと慌ただしくタイトな帰国と滞在でしたが、このレコーディングが大きな山場となりました。ここ数年は毎年、帰国の度にライブとアルバムのレコーディングを行っており、そのバイタリティにいつも驚かされます。
前作と前々作のアルバム・レコーディングは、かながわアートホールで行っていましたが、今回は、スケジュールの事情により、戸塚区民文化センターさくらプラザが収録地となりました。コンサートではよく訪れるホールなのですが、レコーディングで使うのは初めてなので、不安と期待が入り混じる中でホールへ向かいました。
さくらプラザホールはキャパ451席、残響時間は1.9秒(空席時)。ステージは高さがある音響反射板形式となっており、クラシックのコンサートでは響きのよさに定評があります。ピアノ・ソロのレコーディングの場合、残響時間はもちろん考慮すべき重要な要素ですが、時間の長短にもまして問題はその質で、綺麗に減衰して楽器から放射する直接音が曇ってしまわないか、場所によってフラッター的な音の跳ね返りがないか、残響の周波数特性の帯域に偏りがあり音楽の邪魔になっていないかを確認することが大切です。特にピアノの場合は打楽器的な性質と弦楽器的な性質を合わせ持っている楽器なので、設置位置を慎重に検討する必要があります。
私の場合、初めてのホールでレコーディングをする時は、まず、そのホールの舞台担当者に普段ピアノを設置している場所をヒアリングして、おおよその見当をつけます。舞台担当者が認識している位置は一般的には観客に聴かせるための位置なので、レコーディングの場合とは異なりますが、傾向を素早く掴むのによい方法です。
自由で枠にはまらないピアノを弾かれるマサエさんは、過去2作ともピアノの大屋根を外した収録を行ってきており、オープン・ワイドでストレートなサウンドが彼女にピッタリ。今回も大屋根を外して、ステージ中央、客席に向かって若干角度をつけてピアノを設置しました。加えて外したピアノの大屋根をピアノの背面に置き、初期反射の角度をコントロールできるようにしてみました。この方法は違うピアニストさんの収録で実験的に行って好印象でしたので、今回も採用しました。背面にはホールの巨大な反響板があるので、収録前の検討段階では不要かも知れないと思われたのですが、マイク・セッティングとの関係で、角度によって収音のキャラクターが変わってくることが分かってきました。大屋根外しのレコーディングでは有効な手法となる可能性を秘めていると感じました。今後も探求していきたいと思います。
レコーディングは時間制限のある中、急ピッチで進み予定曲全てを完了しました。サティ、ラヴェル、ドビュッシー、ガーシュイン他、マサエさんの即興曲も織り交ぜ、前作同様、マサエさんらしい個性的なピアノ・アルバムになりそうで、リリースが楽しみです。今後は編集とマスタリングを施しマスターに仕上げる予定です。
収録した中から1曲フルとPV用にエディットしたものをご紹介します。
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