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執筆者の写真Takahiro Sakai

木村智明さん レコーディング ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂)

更新日:2021年8月21日

11月18~19日の2日間にかけて、ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂)でピアノのレコーディングをしてきました。ピアニストは木村智明さんです。

レコーディングのお話を頂いたのは、今年の3月11日で、東日本大震災の追悼復興祈念の日でした。木村さんのお父様が福島出身とのことで、地元のホールとピアノ、地元の調律師さんにお世話になって収録したいとのことでした。福島市音楽堂は木村さんにとって思い出深いホールだそうで、このホールでレコーディングできたことをとても喜んでいらっしゃいました。


福島市音楽堂は今年3月より「ふくしん夢の音楽堂」と愛称のネーミングがされ、開館は1984年の歴史あるホールです。訪れたアーティストは、マルタ・アルゲリッチ、クリスティアン・ツィマーマン、スタニスラフ・ブーニン、中村紘子、ユリアンナ・アヴデーエワなど錚々たる顔ぶれで、まさに福島の音楽の歴史を創ってきたホールです。全国のコンサートホールの中でも、響きの豊かなホールとして有名で、残響時間は空席時で3.0秒、満席時で2.5秒と長く、ホールの壁全体に、北陸石川の九谷焼タイルを施し、床には音響効果のため全て桜のムク材を使用しています。こんな素晴らしいホールでレコーディングができてとても光栄でした。



ここでレコーディングするのは2回目になりますが、やはり驚異的な残響時間に驚かされます。公式には3.0秒とアナウンスされていますが、体感的には4.0秒余りあるのではないかと思う程です。手を打った音をiPhoneで録ってみましたので聞いてみてください。




ピアノソロの場合、楽器それ自体の響きのディテールと残響のバランスがポイントになりますが、長い残響時間は、ときとしてマイクアレンジを難しくしてしまう場合があります。打弦のアタック音の跳ね返りも遅延時間が長くなるので、この影響も考慮する必要が出てきます。一般的に言って、クラシック・ピアノのレコーディングにはキャパ300~400程度のホールの広さが、程よくバランスが取れてレコーディングし易いと言われていますが、3~4秒の残響のあるホールは、ある意味、チャレンジングなレコーディングになると思います。


その意味で、今回は明確なサウンドイメージを構想してレコーディングに入りました。ヨーロッパ系のレーベルには教会の中で収録した音源が数多くありますが、楽器のディテールが手掴みできるような質感を保ちつつ、薄いながらもシルキーで上品な残響が長く伸びるサウンドを目標としました。

今回のレコーディングでは、もうひとつ楽しみがありました。ホールに常設されている3点吊り装置に、マイクではなく、小型ビデオカメラを吊り下げて映像を収録してみるという試みでした。吊り下げたビデオ機器は、Osmo Pocketで、3軸ジンバルを備えWi-Fiを通じてスマホからアングルをコントロールできます。



通常3点吊り装置はポジションを決めたら動かさないものですが、カメラを吊るしながら上下左右とダイナミックに動かせば、ちょうどドローンを使った撮影のうような効果を得ることができると思います。今回は時間的な制約もありスナップ的な撮影に留まりましたが、今後が楽しみです。



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