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執筆者の写真Takahiro Sakai

西井葉子さん レコーディング 越後妻有文化ホール「段十ろう」

更新日:2021年8月21日

1月5日~9日の5日間で、ピアノのアルバム・レコーディングをしてきました。収録地は新潟県・ 越後妻有文化ホール「段十ろう」 で、ピアニストは西井葉子さんです。西井さんは三重県伊勢市出身。慶應義塾大学文学部仏文学専攻卒業後、クロアチアのイーノ・ミルコヴィッチ音楽アカデミーピアノ科に特別全額奨学生として学ばれた方で、今回のレコーディングは、クロアチア共和国と交流のある十日町クロアチア・ホストタウン事業として、ご協力とご支援により実現しました。

新潟県十日町市は、2002年日韓ワールドカップの頃から、クロアチアのホストタウンとして、クロアチアのスポーツ選手達の滞在地となっており、2012年にジャパン・クロアチア フレンドシップハウスも建設されるなど交流を深めています。今回のレコーディングはクロアチアのご縁が取り持ったともいえると思います。


西井葉子


新潟県十日町といえば、縄文遺跡でも有名。誰もが教科書で目にしたことのある、有名な火焔型(かえんがた)土器を含む笹山遺跡出土深鉢形土器は国宝に指定されており、貴重な歴史資料として縄文人の生活を今に伝えています。そんな土地柄ゆえ、収録地となった 越後妻有文化ホール「段十ろう」 は国宝火焔型土器をモチーフに建設され、木の温もりが感じられる落ち着いた空間となっていました。


収録したプログラムはピアノ・ソナタ2番をはじめ、オール・ラフマニノフ。そして、録音に使用したピアノは1912年製のニューヨーク・スタインウェイCD368。タカギクラヴィア株式会社さんにより持ち込まれました。ラフマニノフ(1873-1943)は、アメリカに渡った1918年より生涯にわたりニューヨーク・スタインウェイのピアノを弾き続けました。つまり、今回のレコーディングはラフマニノフと同じ時代の空気を吸ったピアノを使い、作曲者が生きた時代の音色で、当時作曲された曲を現代に蘇らせる試みというわけです。

CD368のCDとは、Concert D型の略で、スタインウェイ本社コンサート部の貸出用として活躍していた楽器ですから、ピアノ持ち込みのスタイルも踏襲したことになります。1900年代初頭のスタインウェイは、ゴールデンエイジと呼ばれるほどクオリティが高く、巨匠達の時代を彩った楽器です。間近でその響きを聞くと、ラフマニノフはもちろんのこと、なぜ、あのような曲が生まれたのか納得できるような気がします。この響きあっての曲という感じがしてきます。


レコーディングの方ですが、通常は、演奏者、音楽ディレクター、ピアノ技術者、エンジニアが必須メンバーとなりますが、今回、西井さんは、ご自身でディレクションもなさいました。セルフ・ディレクションで行うことを事前に聞いていたので、モニタールームは調律師さん専用とし、迷うことなくピアノが置かれたステージ上に録音機材をセッティングして陣取りました。ピアニストさんのちょっとした表情やしぐさを通じて得られる情報はとても濃密で、演奏者の精神状態を察知しながら作業を進めたり止めたりすることができます。控室モニタールームからトークバック越しにコミュニケーションをとるのは、空間の隔たりにも増して心理的な壁が生じるような気がして、私は演奏者と同じ空間を共有しながらレコーディングすることを好みます。

レコーディング期間中、収録した音源の編集は翌日の午前中に済ませて、西井さんの確認に備えました。編集したものを聴いていただきながら、気に入らない部分があれば、すぐさまステージ隣のピアノに向かって演奏することもできるため、迅速にジャッジを進めることができて作業効率もよかったと思います。最終日には殆どOKテイクが完成していましたので、今後、さらに細かくブラシュアップができそうです。



十日町は日本有数の豪雪地帯だそうで、出掛ける前にはとても心配しましたが、5日間通じて「この時期にこんな青空はめった見ることがない」と地元の方がビックリするくらいの天気に恵まれて幸運でした。

今年も、オリンピック開幕2週間前から、クロアチアのオリンピック選手達が十日町市に滞在するそうで、その時期に合わせて、7月18日に 越後妻有文化ホール「段十ろう」 で 西井さんのコンサートが予定されています。最新情報については西井さんのホームページをご覧ください。コンサート会場で完成したCDもお手に取ることができると思います。

ひと足はやく1曲ご紹介します。



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